「SWOTをつくってみたけれど、ここからどうしていいかわからない」——これはよくある悩みです。フレームワークは名前こそ有名ですが、単独で扱うとその枠の中だけで情報を整理するだけになりやすく、現実の複雑さにうまく対応できません。
実際の戦略づくりでは、複数のフレームをつないだり、行き来したりしながら考える方が、はるかに精度の高い結論につながります。この記事では、その「組み合わせて使う」という視点を深掘りしていきます。
フレーム単独では視野が閉じてしまう
SWOT、STP、4P、PEST、5フォースなど、ビジネスでよく登場するフレームワークはそれぞれ役割がはっきりしています。ただ、一つのフレームだけで考えると、その枠の中に答えを押し込めようとしてしまい、結果として視野が狭まります。
たとえばSWOTを単独でつくると、「そもそもどの顧客層を想定したSWOTなのか」という前提が不十分なまま議論が始まります。逆にSTPだけを進めても、「自社の強みが何に効くのか」が曖昧なままで、選んだターゲットに対する勝ち筋の根拠が薄くなります。
現実の事業環境は複雑で多面的です。単独フレームでは重要な要素が抜け落ちやすく、戦略の立て方に歪みが生じてしまうのです。
SWOTとSTPはお互いを往復して磨き込むもの
例えば、SWOTとSTPの関係です。STPを変えると、競合も顧客も変わりうるためSWOTの内容も変わります。一方で、SWOTに基づいて強みや市場機会を捉えると、狙うべき顧客層(セグメント)の選択も変わってきます。
つまり、SWOTを固めないとSTPは決まらないし、STPを固めないとSWOTが正しくならないのです。どちらかを先に固定して片方を"当てにいく"のではなく、両方を行ったり来たりする往復作業の中で徐々に解像度が上がっていきます。実務では、この往復こそが戦略の精度を高める重要な工程になります。
他のフレームとも"つながり"があるから戦略は立体化する
SWOTとSTPに限らず、フレームはそれぞれがつながっています。
- SWOTの内部要因(S/W)は、自社と競合の4P/4Cの比較から見えてくる
- 外部要因(O/T)は、PESTや5フォースなどの環境分析が土台になる
- STPはSWOTから導かれ、4Pの具体的施策はSTPとSWOTの掛け合わせで決まる
このように、フレーム同士の関連を理解しながら組み立てると、単体では平面的だった戦略思考が立体的になり、現実の意思決定に耐える強い骨格を持つようになります。
どこまで広げるかは"当事者の納得"が基準になる
ただし、フレームを増やせば増やすほど良いわけではありません。PEST、5フォース、3C…と手を広げすぎると、情報過多になり本質が見えづらくなります。
大切なのは、分析の深さの"線引き"をどこに置くかです。それは教科書ではなく、最終的に戦略を実行する当事者が納得できるかどうかで決めるのが現実的でしょう。フレームはあくまで思考を整理するためのツール。自社の状況に合った組み合わせと深さを選び、現実にフィットする結論に近づけていくことが重要です。
まとめ
フレームワークは"単品"では完結しません。SWOT、STP、4P、PEST、5フォース…それぞれを適切に組み合わせ、行き来しながら考えることで、初めて現実の複雑さに耐える戦略が生まれます。
重要なのは、多くのフレームを知ることではなく、それらをどうつないで"納得できる意思決定"に落とし込むかです。
日野 悠介|中小企業診断士
神戸市を拠点に活動する中小企業診断士。IT業界20年以上のキャリアで、SE・経営企画・コンサルティング営業・デジタルマーケティングを経験。BtoB企業のWebマーケティング支援を中心に、営業改善・IT/AI活用まで支援しています。
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